言語聴覚療法部門
食べるためのアプローチ
食べるためには、口腔ケアで口腔内環境を整えること、口腔機能の向上が必要不可欠です。 誤嚥のリスクに配慮しながら“食べられる口作り"に向けて、口腔ケア・口腔リハビリを十分に行っています。安全な経口摂取に向けて、必要に応じて嚥下造影検査(VF)も実施します。
患者さんの嚥下の状況
令和2年度は255名の入院患者さんがあり、摂食嚥下障害を有する患者さんは44名でした。
経管栄養が必要だった患者さんは16名で、そのうち7名が3食全て経口摂取できるようになり、3名は一部口から食べられるようになりました。
歯科との連携
当院に入院する全患者数の約30%に摂食嚥下障害があり、その半数近くに義歯不適合があります。摂食嚥下障害のリハビリをすすめるには義歯治療は不可欠です。当院では歯科衛生士(DH)をST室に配属しています。DHは義歯治療の必要性の有無をチェックし、訪問歯科診療をおこなう歯科医に情報を伝えます。ST歯科医・ DHが連携して摂食嚥下障害に取り組んでいます。
話す・聞く・考える・コミュニケーションへのアプローチ
患者様の症状にあわせ、退院後の生活に繋がるリハビリを提案します。金銭計算をしたり、電話やiPad等を用いることもあります。時にはゲーム等も取り入れて頭の体操をしたり、楽しくコミュニケーションが図れるよう工夫をしています。
はっきりと聞き取りやすい発話をするためには、意識的に口腔器官を動かすことが必要です。発話症状にあわせた構音訓練や口の体操を行います。また、居室やご自宅でできる自主訓練も提案します。
子どもたちへの言語聴覚療法に特化したアプローチ
子どものことばやコミュニケーション、学習の困難さなどについて、言語聴覚士(ST)による相談、外来リハビリテーションによる個別指導・訓練を行っています。
子どもに合わせたかかわり方や子どもの得意・不得意に合わせた学習方法など、お子さんを支える方法を保護者の方やお子さんに関わる先生方と一緒に考えていきます。
- こんなお子さんが対象です
なかなかことばが出てこない、うまくお話ができない
うまく発音できない音がある、はっきりとお話することができない
言いはじめのことばを繰り返したり、詰まったりすることがある
文字を読んだり、書いたりすること、文章を読み取ることが難しい
お子さんについて気になることがあれば、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
電気治療器(バイタルスティム)の活用
電気治療器(バイタルスティム)は、低周波により筋肉の萎縮を改善する医療機器です。
当院で用いる治療器は、特に嚥下(飲み込み)困難を改善するために開発されたもので、喉の筋肉に微弱な電気を当てることにより、嚥下に関わる筋肉群を刺激します。嚥下(飲み込み)の力は、病気や加齢により弱くなり、食物や水分の誤嚥が生じることがあります。この治療は、嚥下に関わる筋肉を再教育することで、嚥下の力を強くすることが期待されます。
簡易嚥下誘発試験(S-SPT)の施行
簡易嚥下誘発試験(S-SPT)はベットサイドで簡便に施行可能で、患者さんへの負担が少なく、嚥下障害のスクリーニングが出来るテストです。誤嚥には明らかに症状が見える顕性誤嚥と、誤嚥の徴候がみえない不顕性誤嚥とがあり、どちらも誤嚥性肺炎の原因となります。簡易嚥下誘発試験は、この不顕性誤嚥の検出に有効だとされています。検査ではごく少量の蒸留水を咽頭に注入し、嚥下の状態を観察します。この検査を実施することで、不顕性誤嚥を予知し、対策を検討しながら嚥下障害のリハビリをすすめることが出来ると考えています。
舌圧計の活用
舌圧とは舌が口蓋を押し付ける力のことをいいます。舌圧は摂食や嚥下運動に関わることから注目されています。舌圧は脳血管障害や廃用による筋力低下等により低下します。それに伴い食物を咀嚼し飲み込む力にも障害をきたします。この舌圧を測定する“舌圧計"(IOPI)を訓練や評価に用いて、舌機能評価の指標としています。
失語症サロンスマイル
失語症の方・ご家族・言語聴覚士が楽しくおしゃべりをする会です。
入院中は「ことば」や「家や地域での生活」など知りたいことや気にかかることが出てきます。退院された失語症の方やご家族にご協力いただき、実体験を基にした話を伺うことができます。
- 参加者
入院中の失語症の方・ご家族
退院された失語症の方・ご家族
言語聴覚士
- 日時
毎月第4日曜日 午後2時~午後3時(月によって変動あり)
- 場所
1階デイケアルーム
認定資格取得者
私たちは、知識及び技術レベルを向上させ、より質の高い業務を実践するため、各種学会・職能団体が認定する資格の取得を目指し、自己研鑚に努めています。